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- 民事裁判
「君は僕の芸術だ」
順風満帆なキャリアを築いていた二人の女性支店長。しかし、上司のセクハラで人生が一変。会社の隠蔽、不当解雇…追い詰められた彼女たちは、ついに法廷闘争を決意する!
この物語は実際の判例を元にしたフィクションです。登場人物は全て仮名にしております。実際の判例を元にした物語としてお楽しみください。
終幕の兆し
張り詰めた空気の中、証言台で答弁するサイトウ氏の横顔を、冷ややかに見つめるカオリさんとミキさん。
彼女たちは、かつて勤めていた会社とその上司サイトウ氏を相手取り、セクハラと不当解雇による損害賠償を求めて、裁判を起こしました。
ここは、とある裁判所の法廷。
長く苦しい二人の闘いは、今、終わりを告げようとしている。
昇進とセクハラ
二人が会社に入社したのは数年前。
カオリさんは営業担当として実績を積み重ね、支店長にまで昇進。ミキさんも高い営業力を買われ、二箇所の支店長を兼任するなど、順調にキャリアを築いていました。
しかし、そんな二人の人生は、サイトウ氏との関わりによって大きく狂わされていくことになります。
サイトウ氏は、会社の専務取締役。昇進したカオリさんとミキさんの上司にあたる存在で、当然、社内では各部署に影響力のある重役です。そんな彼は、自身の権力を笠に、二人に対して卑劣なセクハラ行為を繰り返したのです。
精神的な苦痛
サイトウ氏はカオリさんに対して、執拗に交際を迫り、肉体関係をも要求。
「君は僕の芸術だ。」
「君を後継者にしてやるから、僕と付き合え。」
サイトウ氏の下劣な言葉たち。
カオリさんは、サイトウ氏の誘いを拒否すると、サイトウ氏は仕事を取り上げ、同僚にカオリさんの中傷を流布するなど、陰湿な嫌がらせを始めました。
サイトウ氏のただならぬ異常性に、カオリさんはとうとう、心身症を発症。精神的に追い詰められていたのです。
ミキさんもまた、サイトウ氏のセクハラ行為の標的となりました。
「カオリさんを私と付き合うように仕向けてくれたら、金と地位を保証する。」
サイトウ氏は、ミキさんをカオリさんへのセクハラを達成するための道具として扱い、卑しい取引を持ちかけたのです。
ミキさんがこれを拒否すると、カオリさん同様、ミキさんも仕事を取り上げられ、職場での立場を悪化させられました。
そして二人は、勇気をふり絞り、サイトウ氏から受けた卑劣な行為の数々を、社長に打ち明けました。
「これでやっと、つらい日常から解放される・・・。」
と思ったのも束の間。二人の苦しみは、サイトウ氏のセクハラ行為と職務上の嫌がらせだけにとどまらなかった。
不当な処分
社長は、二人の悲痛な訴えを軽視。社長は真剣に取り合ってくれませんでした。それどころか、事情聴取の場でカオリさんに対して、心ない言葉をぶつけたのです。
「サイトウ氏に隙を見せたんじゃないかな?」
「カオリさん、本当に好意を抱いてなかったの?」
社長は、ミキさんの訴えに対しても否定するなど、彼女たちを擁護する気配すらなく、ただ責め立てるだけでした。
社長の対応に失望した二人は、会社の本部に助けを求めました。本部の社員は、二人の訴えを深刻に受け止め、調査を開始。
しかし会社は、本部の調査に対して、サイトウ氏のセクハラ行為を否認し続け、本部の調査チームも引き下がるほか選択肢はなく、調査を終了。その後会社は、本部へ連絡したカオリさんとミキさんの行動を大きな問題とし、二人を支店長から平社員に降格、さらに給与を30%カットするという不当な処分を下したのです。
真実を求めて
追い詰められたカオリさんとミキさんは、ついに会社を相手取って訴訟を起こすことを決意しました。
裁判では、原告と被告の主張が真っ向から対立。
サイトウ氏はセクハラ行為を全面的に否定し、カオリさんとミキさんが会社の乗っ取りを企て、自分を陥れようとしていると主張。社長もサイトウ氏を擁護し、原告の訴えを『でっち上げ』だと非難しました。
堂々とした態度でサイトウ氏陣営の見事な答弁に見えたが、図らずもその答弁はあっけなく愚挙と化した。
それもそのはず、サイトウ氏がカオリさんに送ったメールや手紙が重要な証拠として提出されたのです。
「君を抱きたい。」
「後継者になるということは、男女の関係があるのは当たり前だ。」
これらの言葉たちは、サイトウ氏のセクハラ行為を明白に示すものでした。社長の言動もまた、セクハラ問題を軽視し、原告たちを不当に扱った証拠として認定されました。
正義の判決
そして、判決の日。
裁判官は、二人の訴えを認めました。
サイトウ氏のセクハラ行為と、会社による不当な減給・降格処分、セクハラ問題への不適切な対応すべてを問題とし、会社とサイトウ氏に慰謝料、未払い賃金、逸失利益の支払いを命じました。
社長の行為については違法性がないと判断されましたが、会社はサイトウ氏の行為について使用者責任を負うことになりました。
「ついに、報われた・・・。」
セクハラ行為を受けていたあの日からおよそ3年。セクハラという理不尽な行為と対峙し、長く辛い闘いが終幕したこの瞬間。彼女たちの目には涙が溢れていた。
物語の元になった判例
判例PDF|裁判所 - Courts in Japan
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/675/018675_hanrei.pdfオジサンの感想
