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- 民事裁判
献金『一億円』|娘が闘った9年の裁判記録
宗教団体に1億円以上もの献金!娘は返還を求め裁判を起こすも、86歳の母は「今後一切請求しない」という念書にサイン済み。高齢の母、巨額の献金、不可解な念書…娘の裁判の行方はいかに?
この物語は実際の判例を元にしたフィクションです。登場人物は全て仮名にしております。実際の判例を元にした物語としてお楽しみください。
母の異変
母の異変に気づいたのはいつからだっただろう。
86歳になる母は、父を亡くしてからめっきり元気をなくしていた。姉の離婚や、祖母の自殺など、私たち家族には辛い出来事が続いていたけれど、特に父の死は母にとって大きな打撃だったようだ。
そんな母を心配していた矢先、母はとある教会に通い始めた。最初は、新しいコミュニティに属することで、少しでも元気になればいいと思っていた。
この時はまだ、長く過酷な闘いが始まることを知る由もなかった。
崩れゆく日常
母は通い始めた教会で、少しずつその教えに陶然とした。日に日に深まる教会の教えは、まもなくして母の心を支配し、生活の全てを侵食していった。
「お母さん、最近様子がおかしいよ。その教会、大丈夫なの?」
と、何度か気にかける私の声に、
「大丈夫よ。ここで救われるの」
ただただ母は、そう繰り返すだけだった。
そしてある日、母から信じられない言葉を聞かされた。
「お金…教会に…」
私の心は、恐怖で凍りついた。あの日から、私の日常も少しずつ崩れていくのを感じた。
1億円と念書
詳しく話を聞いてみると、なんと母は総額1億円以上もの献金をしていたことが発覚。自宅までも売却し、多額のお金を教会に渡していたのだ。
「お母さん、一体何を考えているの!?」
私の悲しさと怒りは、母には届かなかった。
後日、母は教会の信者であるユウキに、娘である私に献金の事実を話したことを伝えたところ、ユウキは将来返金の請求をされることを懸念し、とある念書を画策したという。
その念書は、献金の返還請求をしないという内容だった。
母はユウキに言われるがままサインをしていた。まるで、洗脳されているようだった。
母から献金の事実を聞いてから、まだ数ヶ月しか経っていない。もう何年も前の話のように重く、忘れ去りたい気持ちでいっぱいだった。
母の闘い
母は、自分が騙されていたことに少しずつ気づき始めた。
そして、自分の意思に反して多額の献金をさせられたと確信し、教会とユウキを相手に裁判を起こした。
私は母を支え、共に闘うことを決意した。
しかし、裁判は圧倒的に不利なものだった。教会側は母が自らの意思で献金したと主張し、念書の存在も私たちから希望を奪っていった。
母の死と私の覚悟
厳しい裁判が続く中、母は静かに息を引き取った。
それでも私は、母のいない法廷で涙をこらえ、闘いを続けることを誓った。母の闘いは、私の闘いになった。母の告白からもう6年も経つ。まだ何も終わっていなかった。
上告の先に
一審、二審ともに退けられた私たちの悲痛な訴え。それでも、私は諦めなかった。母の無念を晴らすため、私は最高裁判所に上告した。
最高裁判所からの判決は2年後の夏だった。
「これまでの判決の一部を破棄する。もう一度、高等裁判所で審理をやり直すこと。」
ついに見えた。長いトンネルの先にある一筋の光。
真実の声と和解
最高裁判決を受け、再び高等裁判所での審理が始まった。
再審となった高等裁判所には、証人の元信者のアヤさんの姿が。彼女は勇気を出して当時の状況を証言してくれた。
「信者たちはマミさんに献金を迫り、献金しないと不幸になると不安をあおっていました。」
アヤさんの証言は、法廷に大きな衝撃を与えた。
そして、高等裁判所は、教会の勧誘行為が違法であったと認め、損害賠償の支払いを命じた。教会は控訴も検討したが、最終的に私と和解した。
未来へ
約9年の闘いに、ようやく終止符が打たれた。
しかし、和解金を受け取ったところで、母が帰ってくるわけではない。
でも、私はこの闘いを通して、大切なものを得ることができた。それは、「正義」という揺るぎない信念だ。私はこの信念を胸に、力強く生きていく。
物語の元になった判例
判例PDF|裁判所 - Courts in Japan
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/196/093196_hanrei.pdfオジサンの感想
