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ハワイでの研究=懲戒解雇処分?
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  • 民事裁判

ハワイでの研究=懲戒解雇処分?

公開:2025/05/19

更新:2025/05/19

判例奇譚編集部

大学教授が懲戒解雇!?発端は申告なきハワイでの在外研究。大学側は規則違反と厳しく糾弾するも、教授は正当な研究活動だと反論。職員の証言、捏造されたメール、二転三転する法廷バトルの行方は?

この物語は実際の判例を元にしたフィクションです。登場人物は全て仮名にしております。実際の判例を元にした物語としてお楽しみください。

教授 vs 学園

午後2時40分。

被告席には、険しい顔をした私立学園の理事長。対する原告席には、やや緊張した面持ちの大学教授ヨシオカさん。
傍聴席は、事の顛末を見守る人で埋め尽くされています。教授と学園の間で、一体何が起きたのでしょうか?
猛暑日を記録した今日は、今夏、最も蒸し暑く感じた。

始まりはハワイ

ヨシオカ教授は、誰もが認める将来有望な大学の教授。勉強熱心な彼は、来季1年間、在外研究のためアジア圏の大学へ行くことを学園側に承諾されていました。

ところが…

学園側の弁護士が声を張り上げます。

「ヨシオカ教授は、その期間中、なんと約6ヶ月間もハワイに滞在していたのです!」

傍聴席からは、どよめきが起こります。ハワイ?なぜ?疑問が法廷に浮かび上がります。学園側の弁護士は、続けざまにヨシオカ教授を厳しく非難します。

「これは、明らかな違反行為です!ヨシオカ教授は学園側に許可を取ることもなく、独断でハワイへ行ったのです!」

学園側は、この行為を重く見てヨシオカ教授を懲戒解雇処分にしたというのです。

教授の反論

ヨシオカ教授は、落ち着いた様子ながらも、強い口調で反論します。

「ハワイでの滞在は、研究活動のためです。現地の大学からも招聘を受けており、二つの大学で研究を進めていました。」

教授の弁護士もすかさず加勢します。

「ヨシオカ教授は、在外研究費を不正に受給したわけでも、大学に損害を与えたわけでもありません。それなのに懲戒解雇とは、あまりに不当な処分です!」

証拠として、ヨシオカ教授の研究成果をまとめた資料を提出。ハワイ滞在が正当な研究活動の一環であったことを堂々と主張しました。

争点1|手続きの不備

学園側の弁護士は、教授の主張を真っ向から否定します。

「確かに、ヨシオカ教授は二つの大学から招聘を受けていたかもしれません。しかし、大学の規則で定められた研究計画の変更手続きを怠っていたのは事実です!」

ヨシオカ教授は、少し声を震わせながら答えます。

「学園の国際センターの担当職員に相談したところ『手続きは面倒だから、君の判断でハワイに行っていいよ』と指示されました。私は、その指示に従っただけです。」

傍聴席がざわめきます。職員の指示?本当にそうなの?
これは、単なる手続きのミスではなく、責任転嫁の可能性も考えられます。

争点2|教授の行動

学園側の弁護士は、さらに追及の手を緩めません。

「ヨシオカ教授には、他にも問題点が沢山あるのです! 学生の個人情報が入ったPCを紛失した件、学部長として入試日に欠勤した件… これらの行為も、学園の規律を軽視している証拠です!」

教授側は、これらについても必死に弁明します。

「PCはパスワードで保護しており、情報が悪用された形跡もありません。」

「入試日の欠勤についても、学園側から出勤不要と伝えられたため、出勤しませんでした。」

果たして、ヨシオカ教授の主張は認められるのでしょうか?傍聴席からも、真相への興味の視線が向けられています。

証人喚問

これらの争点に対し、鍵を握る人物がいます。
それは当時、ヨシオカ教授からハワイへ行く件の相談を受けた、国際センター担当職員のスズキさん。

法廷に漂う緊張感。

まさに今、この裁判の行く末を決めるのは、証言台に立つスズキさんなのです。
裁判官がスズキさんに問いかけます。

「ヨシオカ教授から研究計画の変更について相談を受けましたか?」

スズキさんは、一瞬ためらい、か細い声で答えました。

「…ええ、相談は受けました。」

ヨシオカ教授は、小さく頷き、少しだけ表情が和らぎます。しかし、スズキさんの証言には、まだ続きがありました。

予期せぬ証言

スズキさんは、一瞬言葉を詰まらせ、証言を続けました。

「…ですが、『手続きは面倒だから、君の判断でハワイに行っていいよ』などということは、言った覚えはありません。」

和らいでいたヨシオカ教授の表情が再びこわばります。

傍聴席からは、驚きと落胆のため息が漏れました。スズキさんの証言は、ヨシオカ教授の主張の根幹を揺るがすものだったのです。

ヨシオカ教授の弁護士は、食い下がります。

「スズキさん、あなたは以前、ヨシオカ教授に有利な証言をされていましたが、なぜこの法廷で、証言を翻すのですか?」

スズキさんは、顔を赤らめ、視線を泳がせます。話をはぐらかすばかりで、明確な答えを避けているようでした。
法廷には、不穏な空気が漂い始めます。

捏造メール?

沈黙が法廷を支配したその時、ヨシオカ教授の弁護士が最後の手札を切ります。

「裁判長! 証拠を提出いたします。これは、ヨシオカ教授がスズキさんに送ったメールのコピーです。」

法廷のスクリーンに、メールの内容が映し出されます。そこには、驚くべき内容が記されていました。
スズキさんがヨシオカ教授に対して、研究計画の変更についてある程度の裁量を認めていたことが、はっきりと書かれていたのです。

傍聴席からは、どよめきが起こります。

ヨシオカ教授は、少しだけ安堵した表情を見せました。しかし、学園側の弁護士は、即座に反論します。

「異議あり! そのメールは、ヨシオカ教授が捏造したものです!」

真実は、一体どこにあるのでしょうか? 傍聴席の誰もが、固唾をのんで見守っています。

ついに判決

ヨシオカ教授と学園側、双方の主張が真っ向から対立する中、裁判はついに判決の時を迎えます。

裁判官は、静かに判決文を読み上げ始めました。ヨシオカ教授の運命は、そしてハワイ滞在の真相は、一体どうなるのでしょうか…?

法廷全体に緊張が走る中、裁判官は判決を読み上げました。

「主文。本件懲戒解雇は、無効である。」

ヨシオカ教授の肩から、重圧が解き放たれるのが見えました。安堵のため息をつき、傍聴席の支持者の方へ小さく会釈します。
一方、学園側の理事長は、信じられないという表情で裁判官を見つめています。

判決の理由

「原告のハワイ滞在は、確かに大学の規則に違反していた。しかし、原告はハワイでも研究活動を行っており、大学に経済的な損害を与えたわけではない。」

裁判官は、スズキさんの証言の信憑性に疑問を呈し、ヨシオカ教授が提出したメールを重要な証拠として採用したのです。

「スズキさんの証言には、一貫性がなく、信用性に欠ける。一方、原告が提出したメールは、スズキさんが原告にある程度の裁量を与えていたことを示唆している。」

さらに裁判官は、PC紛失と入試日欠勤についても言及しました。

「PC紛失については、パスワードで保護されており、情報が悪用された形跡もない。入試日欠勤についても、大学側から出勤不要の指示があったと判断する。」

「これらの点を総合的に考慮すると、懲戒解雇は不当な処分と判断し、無効とする。」

復職という課題

こうして、ヨシオカ教授は懲戒解雇を無効とする判決を勝ち取り、白熱した法廷が終わりを告げました。

学園の職位に復帰できることになりましたが、この結末は、学園とヨシオカ教授の間に深い溝を残す結果となりました。

教授は今後、学園側とどのように向き合っていくのでしょうか?

オジサンの感想

原告側の勝利で、復職も認められたが、被告側との溝が埋まることはないでしょうね。この裁判はどんな判決になろうとも、悲しい結末になってしまう代表的な事例と言えるものだな。