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- 公法裁判
同性婚をめぐる「小さな光」
同性カップルが婚姻の自由を求め、国を訴えた!法廷で繰り広げられる原告と被告の主張、そして国民の声とは?憲法24条が規定する婚姻とは何を意味するのか?変わりゆくこの時代に裁判所はどのような判断を下すのか。
この物語は実際の判例を元にしたフィクションです。登場人物は全て仮名にしております。実際の判例を元にした物語としてお楽しみください。
控訴審
晴れた午後の法廷。そこはとても静かで、喧騒とした空気に包まれていた。原告席には固く手を取り合う同性カップルたち、被告席には国の代理人が座っている。
今回の裁判は、同性婚を認めない現行法の合憲性が問われる控訴審。原審では、彼らの訴えは虚しくも退けられていた。
切実な訴え
原告のミサキさんは静かに立ち上がり、語り始めた。
「私たちはただ、愛する人と結婚したいだけなんです」
パートナーのハルナさんと長年連れ添い、喜びも悲しみも分かち合ってきた。
しかし、法は彼らを『夫婦』とは認めない。
社会保障、税制、医療現場…様々な場面で、同性カップルにも当たり前に認められているはずの権利は『婚姻関係』という規則には例を見ないのだ。
「同性同士だから、という理由で家族として認められないのは、憲法違反ではないでしょうか?」
声に、かすかな震えが混じる。
続く原告のサクラさんは、子育て中のカップルだ。パートナーのアオイさんと共に、二人の子どもたちは両親の愛情を一身に受けて育っている。
しかし、片方の親は法的には『他人』でしかない。もしもの時、子どもたちの親権はどうなるのか?不安は尽きない。
「私たちは、子どもたちのためにも、法的な保護を求めています。これは、私たち親子の未来がかかった裁判なんです。」
憲法と伝統
国の代理人は、かくも冷静に反論する。
「憲法24条は『両性』の合意による婚姻を定めています。これは明らかに男女間の婚姻を想定したもので、同性婚は含まれません。」
憲法制定時の議論、過去の判例、そして『伝統的な家族観』を根拠に、現行法の合憲性を主張した。
これもまた、原審と同じように。
婚姻と時代の変化
裁判長は、静かに口を開いた。
「婚姻とは何か…それは時代と共に変化してきました。」
かつては、家制度の維持、子孫繁栄が重視された。しかし、現代社会では、個人の尊厳、愛情に基づく共同生活が重視されるようになっている。諸外国では同性婚が法制化され、日本でも同性のパートナーシップ制度を導入する自治体は増えており、社会は確実に変わりつつある。
傍聴席からは様々な声が聞こえてくる。
「愛の形は様々だ。同性婚を認めるべきだ。」
「結婚は子どもを産み育てるためのもの。同性婚は違う。」
二律背反の想いには、それぞれの正義が込められていた。原告たちにとって、二度目となる判決の言い渡しは、この日からおよそ150日後。
果たして。
判決
緊張感が張り詰める法廷で、判決が言い渡された。
「主文。原告の控訴を棄却する。」
裁判長の言葉に、ミサキさんたちの肩が落ちた。
裁判所は憲法24条の解釈、国会の立法裁量を尊重し、現行法が憲法違反とまでは言えないと判断した。
しかし、裁判長はこう付け加えた。
「同性婚をめぐる社会の変化、国際的な動向は無視できません。立法府の今後の対応に期待します。」
裁判長の言葉は、険しい道を照らす、ほんの小さな光となった。
法廷を後にするミサキさんたち。その表情に曇りはない。どんなに小さな光でも、確かにそこにある。
闘いは、まだ終わってなどいない。
物語の元になった判例
判例PDF|裁判所 - Courts in Japan
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/565/093565_hanrei.pdfオジサンの感想
