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同性婚をめぐる「小さな光」
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  • 公法裁判

同性婚をめぐる「小さな光」

公開:2025/05/21

更新:2025/05/21

判例奇譚編集部

同性カップルが婚姻の自由を求め、国を訴えた!法廷で繰り広げられる原告と被告の主張、そして国民の声とは?憲法24条が規定する婚姻とは何を意味するのか?変わりゆくこの時代に裁判所はどのような判断を下すのか。

この物語は実際の判例を元にしたフィクションです。登場人物は全て仮名にしております。実際の判例を元にした物語としてお楽しみください。

控訴審

晴れた午後の法廷。そこはとても静かで、喧騒とした空気に包まれていた。原告席には固く手を取り合う同性カップルたち、被告席には国の代理人が座っている。

今回の裁判は、同性婚を認めない現行法の合憲性が問われる控訴審。原審では、彼らの訴えは虚しくも退けられていた。

切実な訴え

原告のミサキさんは静かに立ち上がり、語り始めた。

「私たちはただ、愛する人と結婚したいだけなんです」

パートナーのハルナさんと長年連れ添い、喜びも悲しみも分かち合ってきた。
しかし、法は彼らを『夫婦』とは認めない。

社会保障、税制、医療現場…様々な場面で、同性カップルにも当たり前に認められているはずの権利は『婚姻関係』という規則には例を見ないのだ。

「同性同士だから、という理由で家族として認められないのは、憲法違反ではないでしょうか?」

声に、かすかな震えが混じる。
続く原告のサクラさんは、子育て中のカップルだ。パートナーのアオイさんと共に、二人の子どもたちは両親の愛情を一身に受けて育っている。

しかし、片方の親は法的には『他人』でしかない。もしもの時、子どもたちの親権はどうなるのか?不安は尽きない。

「私たちは、子どもたちのためにも、法的な保護を求めています。これは、私たち親子の未来がかかった裁判なんです。」

憲法と伝統

国の代理人は、かくも冷静に反論する。

「憲法24条は『両性』の合意による婚姻を定めています。これは明らかに男女間の婚姻を想定したもので、同性婚は含まれません。」

憲法制定時の議論、過去の判例、そして『伝統的な家族観』を根拠に、現行法の合憲性を主張した。
これもまた、原審と同じように。

婚姻と時代の変化

裁判長は、静かに口を開いた。

「婚姻とは何か…それは時代と共に変化してきました。」

かつては、家制度の維持、子孫繁栄が重視された。しかし、現代社会では、個人の尊厳、愛情に基づく共同生活が重視されるようになっている。諸外国では同性婚が法制化され、日本でも同性のパートナーシップ制度を導入する自治体は増えており、社会は確実に変わりつつある。

傍聴席からは様々な声が聞こえてくる。

「愛の形は様々だ。同性婚を認めるべきだ。」

「結婚は子どもを産み育てるためのもの。同性婚は違う。」

二律背反の想いには、それぞれの正義が込められていた。原告たちにとって、二度目となる判決の言い渡しは、この日からおよそ150日後。

果たして。

判決

緊張感が張り詰める法廷で、判決が言い渡された。

「主文。原告の控訴を棄却する。」

裁判長の言葉に、ミサキさんたちの肩が落ちた。

裁判所は憲法24条の解釈、国会の立法裁量を尊重し、現行法が憲法違反とまでは言えないと判断した。
しかし、裁判長はこう付け加えた。

「同性婚をめぐる社会の変化、国際的な動向は無視できません。立法府の今後の対応に期待します。」

裁判長の言葉は、険しい道を照らす、ほんの小さな光となった。
法廷を後にするミサキさんたち。その表情に曇りはない。どんなに小さな光でも、確かにそこにある。

闘いは、まだ終わってなどいない。

オジサンの感想

今もなお、議論が進むテーマですな。ルールによって不利益が生まれていることを否定できないのもまた事実。さらに議論が深まり、いつの日か、誰もが納得して幸せに暮らせる世の中になると良いですな。